オーガニック・無添加・食品のお店

赤くなった米

昔むかしの話を思い出した。私がオーガニックのコメを作っていたときにちょっと離れたところにお住まいで自然農法の福岡正信氏のファンの方がいらっしゃった。私が有機米を作っていると知って、親しくなった。その結果私が彼女の田んぼを借りて有機栽培米を作ることになった。彼女は高齢だったので、誰か有機に理解のある人に自分の田んぼを貸してあげたかったのだろう。私は喜んで引き受けた。

その年私は一生懸命に仕事をした。収穫をしたあとに米を乾燥しなければならないのだが、離れていたために同じ町内で彼女の知り合いのところで刈り取った米を乾燥することに決まった。何日かたって米が乾燥して玄米になったので引き取りに行くことになった。ところがその方の農作業小屋に一歩足を踏み込んだ時に、私の頭の中を一瞬誰かが「米がすり替えられている」と言った言葉が横切った。なんだろうと思ったんだけれども、そのままできた米をトラックに運んでお金を払って帰った。

その米は彼女も一緒に有機で育てた米だった。もちろん化学肥料や農薬、除草剤などは全く使わず、手間かけて草取りなどして汗を流して育てた米だった。特別な米だったので、あるお客様にちょっと手に入らない貴重なコメで味噌を作る話をし、その結果「手作り味噌」のセットとして販売することになっていた。楽しみにしながら米を精米し、水に浸せきして蒸したところ、なんと米が真っ赤になってしまった。びっくりした。作業をやめるわけにも行かず、代わりを作りなおす時間もなく、そのまま麹に加工した。しかしやはり米の赤みはどうしても消えず、赤い色の麹になった。お客様に説明しお詫びをし許しを乞うた。しかし結局納得はしてもらえず、翌年から注文はこなくなった。

種まきから収穫まで彼女と行って来たわけで、乾燥だけ他人に任せたため、ここがブラックボックスで怪しかった。そういえば米を引き取りに行ったときに、米がすり替えられていると頭の中をその言葉が走ったことを思い出した。しかしそれは本当かどうかはわからなかった。が、たぶん乾燥したときに、別の米とすり替えられたのだろうと私は思った。確証をつかんだわけでないし、損害を弁償請求するつもりもなくそのまま泣き寝入りした。あくる年に彼女と話をすることがあって、たまたまその乾燥作業をしていただいた方の話となった。米が赤くなり麹が赤くなってしまい、取引先に迷惑をかけてしまった話をした。すると彼女も私と同じように小屋に入った瞬間、すり替えられていると直感したというのだ、、、。そしてあれからしばらくしてそのかたは、お亡くなりになられたそうだ。病名は忘れたがかなり苦しみながら亡くなられたと聞いた。結局赤い米の真実は、本人と天だけが知っていてどうだったのかは今もわからない。

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河崎 宏

マルカワみそ

マルカワみその社長を務めております。これからの時代は、ますます命にかかわる「生命産業」が、社会から必要とされることになる。「和食のみそを中心に、食と健康の貢献企業」を目指してまいります。

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